持ち運びが出来る「ポータブル電源」の人気は高く、キャンプやレジャー以外にもポータブル電源を使う方が増えています。
とくに最近では、防犯面の不安から「テントよりも車中泊」を選ぶ方も多いため「夏場はサーキュレーター」「冬場は電気毛布」などを使った車中泊も好まれています。
また、ポータブル電源の需要が増えている昨今に於いては、比較的重量の軽い「小型のポータブル電源(容量の小さいポータブル電源)」を電車やバス移動で持ち運んで使用する(出張時など)人まで出てきました。
ところが、小型のポータブル電源は持ち運びが容易な事から「飛行機内への持ち込み」に関するトラブも増えているのです。
そこで今回は、ポータブル電源が飛行機で運べない|その理由と制限について解説をします。
記事のポイント
飛行機の機内にポータブル電源は持ち込めるのか?
持込み可能な「基準」にを解説
実際のポータブル電源のスペックで検証
小型のポータブル電源を持って「北海道や沖縄などの離島へお出かけ」の計画を考えている方は、ぜひ最後までご覧ください。
2010年9月の「事故」がきっかけ
ポータブル電源が飛行機で運べない理由は、2010年9月3日に発生したUPS航空の墜落事故がことの発端となっています。
ドバイからドイツのケルン・ボン国際空港へと離陸した貨物機内で発生した「機内火災」により、乗員2名(操縦士・副操縦士)が死亡するUPS航空初の重大事故が起こったのですが、この火災の原因となったのが貨物室に搭載された「リチウムイオン電池」によるものでした。
この事故をきっかけに、世界100か国以上、10万人以上のパイロットが加入する「国際定期航空操縦士協会連合」が、2011年8月に「リチウムイオン電池等の輸送に関する声明」を発表したことを皮切りに、リチウムイオン電池(ポータブル電源やモバイルバッテリーなど)の機内持ち込みや輸送(空輸)に関する制限が厳しくなったのです。
ポータブル電源は「機内持ち込み」できるのか?
ここからは、具体的に航空各社(ANA・JAL)のポータブル電源(リチウムイオン電池)を機内持ち込み(お預け)する場合の条件について解説をします。
種 類 | 定格容量(Wh) | 機内への持ち込み | 預け入れ |
本体に内蔵 | 160Wh以下 | ANA:〇 JAL:〇 | ANA:〇 JAL :〇 |
〃 | 160Whを超える | ANA:× JAL :× | ANA:× JAL:× |
予備電池 モバイルバッテリー | 100Wh以下 | ANA:〇 JAL:〇 | ANA:× JAL:× |
〃 | 100Whを超え160Wh以下 | ANA:〇 JAL:〇 ※各社2個までOK | ANA:× JAL:× |
〃 | 160Whを超える | ANA:× JAL:× | ANA:× JAL:× |
航空各社を比較した場合に於いては、機内持ち込みやお預けに関する制限に違いは無いものの、容量に関してはかなり厳しい条件が設定されている事が分かります。
また、ポータブル電源については「予備電池・モバイルバッテリー」の項目に該当するため「預け入れ」については「不可」となるので注意が必要です。
リチウム含有量(g)
容量(Wh)以外にも「リチウム含有量(g)」に対する制限もあるため注意が必要です。
リチウム含有量の計算方法
ポータブル電源・モバイルバッテリーなどに記載のある「電流:○○○mAh」の表示を確認
電流:(○○○mAh ÷ 1,000) × 0.3 = リチウム含有量
計算例)⇨(4600mAh ÷ 1,000) × 0.3 =1.38(g) となります
リチウム含有量については「総計2(g)以下」が1つの基準となっているため、それを超える場合は注意が必要です。
※JALの場合は上表の条件を満たした場合であっても「電池の取り外しが出来ないもの」については機内持ち込みも預ける事も出来ません。
二次電池の場合リチウム含有量(g)について
一般的に、使い捨ての乾電池を「一次電池」と呼び、充電できる電池を「二次電池」と呼びます。
ポータブル電源の場合は後者に分類されるのですが、通常、二次電池の場合は「定格容量」の要件を満たせば飛行機内への持ち込みは可能となります。
その理由は、二次電池の場合はリチウム(リチウム金属のこと)が殆ど含まれないため、先ほどの計算をするまでも無く「定格容量」で判断する事が出来るのです。
リチウム含有量(g)が曲者(くせもの)
二次電池の場合はリチウム含有量(g)を計算することなく「定格容量」だけで本来は判断できるのですが、実際は「そんなに甘くはない」のです。
ANAの事例
定格容量150Whのポータブル電源が持ち込み不可
ここでのポイント
160Wh未満のため「本来であれば持ち込み可能(お預けは不可)」
同機種の仕様 ⇨ 30,000mAh
先程のリチウム含有量(g)の計算をしてみると ⇨ リチウム含有量9g
ポータブル電源(二次電池)の場合、リチウム含有量(g)の計算をする必要は無いのですが「定格容量150Wh・30,000mAh」のポータブル電源は「持ち込み不可」と判断された事例があります。
正式に公表されているものではありませんが、恐らくこの場合は「30,000mAh」が持ち込み不可となった理由だと考えられます。
2個まで(携帯型医療用電子機器の予備のリチウム電池やリチウムイオン電池を含む。ただしリチウム含有量が2gを超え8g以下のもの、ならびにワット時定格量が100Whを超え160Wh以下のもの。)
※JAL:制限のあるお手荷物より引用
このように、ポータブル電源を飛行機内へ持ち込むには厳しい条件をクリアーする必要があるため、必要に応じて航空各社に確認するようにしてください。
尚、海外の航空各社もほぼ条件は同じです。
小型のポータブル電源で機内持ち込みの「可否」を検証してみる
数値だけでは分かりにくいので、ここでは実際の小型ポータブル電源の仕様から機内持ち込みの可否について検証をします。
Handife ポータブル電源 20000mAh AC90W の場合
先ずはHandife ポータブル電源 20000mAh AC90Wについて検証してみたいと思います。
ここでのポイント
容量・・74.0Wh ⇨ 100Wh以下の条件 OK ⇨ 持ち込み可能
リチウム含有量・・(20000mAh÷1,000)×0.3=6.0g ⇨ 持ち込み可能
本体重量 ⇨ 5.0㎏以下 OK ⇨ 持ち込み可能
Handife ポータブル電源には「20000mAhの表示 」があるため、念のためリチウム含有量の計算をすると「6.0g」となるのですが、持ち込み基準の2.0g(6,650mAh以下)と判断される場合があるので事前確認が必要です。
Omars ポータブル電源 の場合
Omars 人気 ポータブル電源の場合も次の通りです。
ここでのポイント
容量・・88.0Wh ⇨ 100Wh以下の条件 OK ⇨ 持ち込み可能
リチウム含有量・・(24000mAh÷1,000)×0.3=7.2g ⇨ 持ち込み可能
本体重量 ⇨ 5.0㎏以下 OK ⇨ 持ち込み可能
Omarsポータブル電源の場合は飛行機内への持ち込みは出来るはずですが、こちらの場合も事前に航空各社へ問合せをすることがおすすめです。
※こちら⇩⇩⇩はOmarsの同等機種
PhewMan(ヒューマン) ポータブル電源 100W の場合
PhewMan(ヒューマン) ポータブル電源 100Wの場合について検証してみます。
ここでのポイント
容量・・97.2Wh ⇨ 100Wh以下の条件 OK ⇨ 持ち込み可能
リチウム含有量・・(27000mAh÷1,000)×0.3=8.1g ⇨ 持ち込み不可の可能性あり
本体重量 ⇨ 5.0㎏以下 OK ⇨ 持ち込み可能
PhewMan(ヒューマン) ポータブル電源 100Wの場合は、容量は規定の条件を満たしますがリチウム含有量が規定を超えるため持ち込み不可となる可能性(ANAの事例のように)があります。
EcoFlow RIVER mini の場合
次に、小型ポータブル電源の中では圧倒的シェアを誇るEcoFlow RIVER miniの場合についても確認しておきます。
ここでのポイント
容量・・210Wh ⇨ 160Whを超える NG ⇨ 持ち込み不可
リチウム含有量・・(58333mAh÷1,000)×0.3=17.4g ⇨ 持ち込み不可
本体重量 ⇨ 5.0㎏以下 OK ⇨ 持ち込み可能
EcoFlow RIVER miniのような片手で気軽に持ち運べるポータブル電源でさえ、飛行機内への持ち込みが難しい事が分かります。
リチウム含有量の目安
リチウム含有量を調べるには電流(mAh)から導き出す必要があるため、いちいち計算するのが面倒なので「リチウム含有量の目安」についても簡単にご紹介しておきます。
もちろん、ポータブル電源の場合は二次電池のため本来は考慮の必要が無いのですが、前例がある以上はここを無視することは出来ません。
ここでのポイント
6,650mAh以下の場合 ⇨ リチウム含有量1.995g
26,660mAh以下の場合 ⇨ リチウム含有量7.998g
この2つ(6,650mAh・26,660mAh)を覚えておくだけでリチウム含有量についての知識としては充分です。
結論・まとめ
飛行機内にポータブル電源やモバイルバッテリーを持ち込む際には厳しい制限がある事が分かりました。
参考までに4つのポータブル電源について「持ち込みの可否を検証」しましたが、航空各社や担当者によって判断が異なる事も想定できるため、いずれの場合に於いても搭乗前に確認しておくことが必要です。
また、ご紹介した通り条件を満たすポータブル電源はいくつかありますが、いずれの場合に於いても「リチウム含有量の規定」で判断される事があるため注意が必要です。
2010年の事故をきっかけにポータブル電源(リチウムイオン電池)の取扱いは厳しくなりましたが、正しく取り扱う事でこのような事故は防げます。
最後に、これからの季節(夏に向けて)ポータブル電源にとって厳しい環境を迎えますが、管理場所や使用する際の温度には気を付けてお使い頂ければと思います。
※ポータブル電源の温度に関する記事はこちら⇩⇩⇩
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