電源の安定供給は、日常生活から産業現場まで、私たちの生活に欠かせない要素です。
しかし、電源が抱える問題や現状について、十分に理解している方は少ないのではないでしょうか。
そこでこの記事では、電源車の現状と、新たなソリューションとしてのハイブリッド電源車について解説します。
記事のポイント
- 電源が抱える問題
- 電源車の現状
- 発電機と蓄電池のデメリット
- ハイブリッド電源車が提案するソリューション
ハイブリッド電源車の定義は、LPガスと蓄電池から電源供給を行う車両(移動電源車)の事を指します。
「LPガス発電機と蓄電池」、この二つの電源は、それぞれ異なるデメリットを持っていますが、ハイブリッド電源車ではこれらのデメリットを相互に補うことで、より効率的な電源供給を実現することが出来るのです。
ここからは、ハイブリッド電源車の「実装に至ったまでの背景」について、詳しく解説をします。
「電源」が抱える問題
電源の問題は、私たちの生活やビジネスに直接的な影響を及ぼすものです。
特に、災害時や緊急時には、安定した電源供給が求められるのですが、現実には多くの問題が存在し、それらの問題解決のための新しいアプローチが求められています。
電源の不安定性とその影響
電源の不安定性は、突然の停電やブラウンアウト(電圧低下)などの形で私たちの日常に影響を及ぼします。
これらの問題は、家庭の電化製品の故障やデータの損失、ビジネスの機会損失など、多岐にわたるリスクを生む可能性があり、特に、医療機関や研究施設など、電源の安定性が命に関わる場面では、その影響は計り知れません。
用語の解説
ブラウンアウトとは:定常的(数分間から数日)に交流電圧が低下した状態のこと。
災害時の電源確保の難しさ
ご承知の通り、日本は地震や台風などの自然災害が多い国です。
これらの災害が発生した際に電力供給が途絶えることは、生活インフラの維持や救助活動を困難にします。
また、災害時には移動が制限されるため、電源を確保するための機器や燃料の供給が難しくなるのが現状です。
現場作業における電源の必要性
建設現場や農作業、イベントの設営など、多くの現場作業では電源が必要不可欠です。
これらの現場では、電源供給の不安定性や供給範囲の制限が作業の効率や安全性を低下させる要因となり、特に、遠隔地での作業や大規模なイベントでは、大量の電源を確保することが課題となります。
そもそも、電源車(移動電源車)とは?
本題に入る前に、ここでは簡単に、電源車(移動電源車)について解説をします。
電力供給に必要な機器一式(発電機など)を車両に搭載したもので、その車両の「駐車場所が仮設の発電所」になります。
電源車は、オフィスビルからデータセンター、空港、野外コンサートなど、電気の欠かせない現代人の日常を陰で支えていますが、 防災用としての電源車の役割は非常に重要です。
ここがポイント
電源車(移動電源車):一般的に発電機や大型の蓄電池を搭載した車両のこと。
電源車の現状
電源車(移動電源車)の世界市場規模は、2017年から2022年にかけて平均年成長率4.56%増で推移し、2022年に17億3000万ドルに達すると予測されてきました。
電源車(移動電源車)は、災害時や緊急時に電力供給を行うための車両で、電力会社や通信会社、イベント会社などが主な顧客となっています。
また、近年では、電気自動車 (EV) や燃料電池車 (FCV) などのクリーンエネルギーを使用する移動電源車の開発も進められているのが現状です。
電源車が抱える問題点を考察
電源車(移動電源車)は、災害時や緊急時に電力供給を行うための車両の事を指しますが、電源車(移動電源車)が抱える問題として、以下のようなものが挙げられます。
電源車が抱える問題
- 燃料の調達・・発電機を搭載する電源車は、内燃機関や発電機を使用して電力を供給するため、燃料の調達が必要なため、災害時や緊急時には、燃料の供給が困難になることがある。
- 整備やメンテナンス・・発電機を搭載する電源車は、内燃機関や発電機を使用するため、定期的な整備やメンテナンスが必要です。また、ガソリンや軽油は劣化するため、定期的な燃料の交換が必要。
- 騒音や排気ガス・・発電機を搭載する電源車は、内燃機関や発電機を使用するため、騒音や排気ガスの問題を抱えています。その為、屋内で使用することが出来ない。
- 蓄電池を搭載した電源車・・蓄電容量が限れらえているため、発電機のように「大量の電気を供給」することが難しい。
燃料の調達
LPガスを発電機の燃料として選ぶと、ガソリンや軽油のような緊急時のパニック買いが減少し、燃料の手配も簡単になります。
発電機と蓄電池のデメリット
前のセクションで解説をした内容と一部重複しますが、「発電機と蓄電池のデメリット」について、ここでは整理しておきます。
発電機のデメリット
- 燃料の劣化・・一般的な発電機の燃料は時間とともに劣化してしまいます。また、劣化した燃料に「新しい燃料を継ぎ足す」方も居られますが、注意が必要です。
- 騒音と排気ガス・・発電機が動作している際は、常に騒音と排気ガスの問題がついてきます。屋外にある発電機から、屋内へ電気を供給する際には、物理的な問題(距離)も発生する。
蓄電池のデメリット
- 電気の容量制限・・蓄電池はある一定の容量までしか電気を蓄えることができません。
- 充電の制限・・ソーラーパネルなどの再生可能エネルギーからの充電は、天候や時間帯によっては十分な電力を供給できないことがあります。
一般的に、発電機で発電される電気は、負荷を繋いでいない際に垂れ流されることはありませんが、発電機の種類によっては、負荷が接続されていない場合でも、一定量の電力が消費されることがあります(発電機の内部回路による消費電力)。
しかし、アイドリングの状態でも「発電機の燃料は消費」するため、燃費は悪くなります。
ハイブリッド電源車|LPガス発電機と蓄電池の相乗効果
ハイブリッド電源車は、これまで解説をしたような「LPガス発電機と蓄電池のデメリット」を相互に補うことで、安定した電源供給を実現してくれます。
このようなエネルギーソリューションは、環境問題やエネルギー問題の解決に向けて、大きな一歩となる可能性を持っていますが、ここからは、ハイブリッド電源車について、詳しく解説をします。
ハイブリッド電源車が提案するソリューション
ここでは、ハイブリッド電源車が提案するソリューションについてのポイントを解説します。
ハイブリッド電源車の最大のメリットは「発電機と蓄電池の特徴を生かした相乗効果」を得られる事ですが、先ずは両者のメリットについて、ここでは整理しておきます。
LPガス発電機のメリット
LPガス発電機に使用するエネルギー(LPガス)は災害に強い「分散型エネルギー」と呼ばれます。
電気や都市ガスなどは、災害によって配管や電線が損傷し止まってしまうリスクがありますが、LPガスを蓄えておけば、災害などで止まってしまうリスクが低くなります。
LPガス発電機の強み
- LPガスは長期間に渡り保管をしても劣化しないため「いざと言う時に使えなかった」といった心配がありません。
- LPガスの供給は途絶しにくく、近年の大規模災害に於いても、供給が途絶した記録はありません。
- LPガスはCO2の排出量が他の燃料と比べて少なく、燃焼時に排出されるガスもクリーン。
蓄電池のメリット
蓄電池(ポータブル電源)の最大の強みは「屋内での使用」が可能だという点です。
排気ガスを出さない蓄電池(ポータブル電源)は、屋内での電力供給に最も適しています。
また、発電機のような騒音も出さないため、使用する場所を選びません。
ポイント
- 電源設備の無い場所へも、電気を持ち運ぶことが出来る。
- リン酸鉄リチウムイオン電池を使用することで、発火のリスクが軽減され、安全に使用することが出来る。
- 複雑な操作が不要(業務用蓄電池の場合)なため、誰でも簡単に使用することが出来る。
ハイブリッド電源車では、これらのメリットを最大現に活かすことで、これまでに無い電源車(移動電源車)としてのソリューションが提案できるのです。
✽LPガス発電機の詳細については「BCPジェネレーター解説」をご覧ください。
ハイブリッド電源車の構造と実際の使用方法
ハイブリッド電源車の具体的な仕組みや性能について、ここからは詳しく解説します。
これにより、行政や自治体、現場作業者の方々が、より具体的な利用シーンのイメージを持って頂けるでしょう。
ハイブリッド電源車の構造
ハイブリッド電源車に使用する車両については「軽トラック」が基本になりますが、車両の荷台部分に必要な機材を全て搭載します。
ハイブリッド電源車に搭載する機材
- LPガス発電機
- 蓄電池:リン酸鉄リチウムイオン電池(7,200Wh ×2台:合計:14,400Wh 下画像)
- 分電盤
- LPガス小容器(一般車両での積載移動:10㎏・容器2本以下)
蓄電池については、分電盤・LPガス小容器の横に設置しますが、実際の設置時には「アルミ製BOX」に格納した状態になります。
また、蓄電池の出力に関しては、接続されるインバーターの性能により、AC100V・AC200V(単相)に対応する事が可能です。
蓄電池の使用
- 電池の種類 リン酸鉄リチウムイオン電池
- 電池容量 150A
- 定格電圧 48V
- 本体重量 39.7㎏
- 防塵防水 IP65
ハイブリッド電源車の使用方法
ハイブリッド電源車は、状況に合わせて最適な電源供給を実現します。
屋外で騒音や排気ガスの制限がない場所では、LPガス発電機を使用して電力を供給し、一方では、屋内での使用を考慮して、車に搭載された蓄電池を移動させて電気を供給することもできます。
また、LPガス発電機が利用可能な環境では、蓄電池の限られた「容量」の問題を、LPガス発電機からの給電=充電により解消する事ができます。
一方、屋内での電力需要がある際には、LPガス発電機を使用して蓄電池を充電することで、排気ガスの懸念も回避できます。
ここがポイント
現場の状況に合わせて、LPガス発電機と蓄電池のいずれかを選んで給電することができます。
電気事業法の保安規制|消防法による移動用発電設備の保安規制
LPガス発電機の出力が、ある一定の数値を超えると「電気事業法の保安規制」や「消防法による保安規制」に該当するため、届出や保安規定の作成などの義務が発生します。
一方、ハイブリッド電源車は特定の保安規制に該当しないため、電気主任技術者の選任や保安規定の作成が不要です。
✽電気事業法の保安規則については「主任技術者不要の発電機」をご覧ください。
「消防法による移動用発電設備の保安規制」はこちらをご覧ください。
実際の利用シーンや事例紹介
2023年8月現在、ハイブリッド電源車の導入は新しい段階にありますが、その柔軟性を最大限に活用し、屋外作業の電源や緊急時のサポートとして、全国での展開を進めています。
この先進的な「ハイブリッド電源車」を多くの方々に知っていただき、新しいエネルギーソリューションへの一歩としての役割を果たすことを心から願っています。
まとめ
本記事では、LPガス発電機と大容量蓄電池を組み合わせた「ハイブリッド電源車」について詳しく解説しました。
この電源車の最大の特徴は、有事の際や屋外活動での電源提供を迅速に行うことができる点ですが、自治体の非常用電源車や屋外イベント、土木・建築現場での電源としての利用も期待されます。
ただ一方で、電気事業法の届出が不要であるため、出力には限りがあることを理解しておく必要があります。
しかし、LPガス発電機と蓄電池の組み合わせは、新しいエネルギーソリューションの可能性を秘めており、今後の展開が非常に楽しみです。
今後は展示会などを通じて実車のデモンストレーションを行う予定であり、技術の向上とともに、より実用的な電源車の開発を目指して参ります。
最後に、ハイブリッド電源車のプロジェクトはまだ始まったばかりであり、フィードバックや改善の提案を歓迎しています。
本記事を通じて、ハイブリッド電源車の魅力とその可能性について理解していただけたら幸いです。
最後までご覧頂きありがとうございました。
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