リチウムイオン電池の充電の仕組み
リチウムイオン電池の充電は、大きく分けて2つのフェーズで行われます。
- 定電流充電(CC): 0%〜約80%の間は、一定の電流を流して急速に充電します。
- 例えば、「PD(Power Delivery)対応の急速充電」で、最大30Wや100Wなどの高出力で充電できるのはこのフェーズです。
- この段階では、バッテリー内部の電圧が徐々に上がっていきます。
- 定電圧充電(CV): 約80%〜100%の間は、一定の電圧を維持しながら、徐々に電流を減らして充電します。
- このフェーズでは、電池の劣化を防ぐため、過剰な電流を流さず、ゆっくり充電します。
- そのため、80%を超えると充電速度が落ちます。
なぜ100%まで急速充電しないのか?
リチウムイオン電池は、満充電(100%)や過充電になると劣化が早まるため、メーカーは電池寿命を延ばすために意図的にゆっくり充電するように設計しています。
特に、スマートフォンではバッテリーの劣化を防ぐために「80%まで急速充電→その後ゆっくり充電」という方式が多く採用されています。
充電容量と寿命の関係
リチウムイオン電池の寿命は「充放電の回数」と「充電の深さ」に影響されます。
- フル充電(100%)は劣化を早める
- 満充電(100%)を頻繁に行うと、バッテリーの寿命が短くなります。
- 電池は50%〜80%の間で使うと寿命が長くなります。
- そのため、一部のスマートフォンでは「80%で充電を止める機能(バッテリー保護モード)」が搭載されています。
- 深い放電(0%まで使い切る)も劣化の原因
- 電池を0%まで使い切ると、内部の化学反応が負担となり寿命が短くなります。
- およそ20%〜80%の範囲で充電・使用するのが理想的です。
80%充電のススメ!
- 80%まで高速充電できるのは、「定電流充電(CC)」の段階だから。
- 80%以上遅くなるのは、「定電圧充電(CV)」に切り替わるから。
- バッテリー寿命を延ばすには、80%までの充電を推奨する機能がある。
- 「満充電(100%)」と「深い放電(0%)」を避けてみましょう。
スマートフォンやモバイルバッテリーの寿命を延ばしたいなら、「80%まで充電して使う」のがベストな使い方です!
リチウムイオン電池の寿命に影響を与えるその他の要因
- 過充電・過放電: 過充電や過放電は、電池に大きな負担をかけ、寿命を縮める原因となります。
- 保存時の充電状態: 充電状態が高い状態で長期間保管すると、電池の劣化が早まります。
- 使用環境: 高温環境下での使用や保管は、電池の劣化を促進させます。
- 充放電サイクル: 充放電を繰り返すうちに、電池内部の化学反応が鈍くなり、劣化が進みます。
リチウムイオン電池の寿命を延ばすための10個のコツ
- 適切な充電方法: バッテリー残量が20%程度になったら充電を開始し、75~85%程度で充電を終了するのが理想的です。
- こまめな充電: 0%付近や100%付近での使用は避け、こまめな充電を心がけましょう。
- 充電サイクルの理解: 充電サイクルは、充電した量の合計が100%になった回数を指します。例えば、50%まで充電した後に残量を使い切り、再び50%まで充電した場合、これは1サイクルとカウントされます。
- 保管時の注意点: 長期間使用しない場合は、50%程度の充電状態で保管しましょう。また、高温多湿の場所や極端に寒い場所を避け、15℃~25℃程度の涼しい場所で保管することが重要です。
- 適切な使用環境: 高温環境下での使用は避け、できるだけ涼しい場所で使用するようにしましょう。リチウムイオン電池の最高許容温度は45℃です。直射日光の当たる場所や夏場の車内などは注意が必要です。
- 急速充電の頻度: 急速充電は電池に大きな負荷をかけるため、頻繁な使用は避けましょう。低速充電の方が電池に優しく、寿命を延ばす効果が期待できます。
- 純正の充電器を使用: 純正の充電器を使用することで、過充電や過電流を防ぎ、電池の寿命を保護することができます。
- 衝撃や振動を避ける: 過度の衝撃や振動は、電池内部にダメージを与え、寿命を縮める原因となります。
- 電池の温度に注意: 充電中や使用中は、電池の温度が上昇することがあります。高温になる場合は、使用を中止し、電池を冷ましてください。
- 定期的なメンテナンス: 定期的に電池の状態をチェックし、異常があれば早めに交換しましょう。
リチウムイオン電池の寿命を測定する方法
- 充放電サイクル試験: 一定の条件で充放電を繰り返し、電池容量の低下を測定する方法。
- HPC測定: 高精度クーロン測定を用いた方法。数サイクル~十数サイクルの充放電試験で、数百サイクル後の寿命を推定することができます。
- 抵抗測定: 電池の内部抵抗を測定する方法。内部抵抗の増加は劣化の指標となります。
- 電圧測定: 電池の電圧を測定する方法。電圧の低下は劣化の指標となります。
- マルチメーター: マルチメーターを使用して電池の状態をテストする方法。
リチウムイオン電池の寿命に関する最新研究
- 初回充電方法の改善: 初回充電時に大電流で高速充電を行うことで、サイクル寿命が50%増加することが示されました。
- 金属リチウム電池の開発: 金属リチウム電極を用いた金属リチウム電池は、現行のリチウムイオン電池よりも高いエネルギー密度を実現できる可能性があります。
- 劣化モデルの研究: 電池の劣化ばらつきを考慮した組電池の設計手法などが検討されています。
- 超長寿命リチウムイオン電池の開発: 従来のリチウムイオン電池の寿命を6倍以上に達成できる材料開発に成功しました。
寿命が長いリチウムイオン電池を採用している製品例
- Jackery ポータブル電源 1000 New: 1070Whの大容量と1500Wの高出力を備え、軽量コンパクトな設計。
- PowerArQ Pro 1002Wh: PowerArQシリーズの中で最も寿命が長いと評価されている。
- Anker PowerHouse 767: リン酸鉄リチウムイオン電池を採用し、約3,000回の充放電サイクルを実現。
- EcoFlow DELTA Pro: 長寿命のリン酸鉄リチウムイオン電池を搭載し、6,500回以上の充放電サイクルを実現。
まとめ
リチウムイオン電池の寿命は、使用状況や保管状況によって大きく変化します。適切な充電方法や保管方法を心がけることで、電池の寿命を延ばし、携帯端末やポータブル電源をより長く使用することができます。
特に、「80%充電」を意識することで、バッテリーへの負担を軽減し、寿命を延ばすことができます。
最新の研究成果や長寿命な電池を採用した製品なども参考に、リチウムイオン電池を賢く使い、快適なデジタルライフを送りましょう!
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