ポータブル電源に搭載される「電池(バッテリー)」にはいくつかの種類がありますが、ポータブル電源を選ぶ際に「搭載されるバッテリー(電池セルとも言います)」の違いで悩まれる方も多いのでは無いでしょうか。
バッテリーの種類
- リチウムポリマー系電池
- 三元系リチウムイオン電池
- NCA系リチウムイオン電池 ※N:ニッケル C:コバルト A:アルミニウム の頭文字をとってNCA
- リン酸鉄リチウムイオン電池
搭載される電池(バッテリー)にはそれぞれ「特徴」があり選ぶバッテリー(電池セル)によって「劣化の速度や安全性」が異なりますが、その中でもポータブル電源メーカー各社の主流になりつつあるのが「リン酸鉄リチウムイオン電池」です。
この記事を最後まで読んで頂く事で・・
記事のポイント
リン酸鉄リチウムの安全性が分かる
リン酸鉄リチウムの劣化について分かる
ポータブル電源を選ぶ際の基準が判断できる
ポータブル電源に搭載されるリン酸鉄リチウムイオン電池の劣化や安全性について興味のある方は、ぜひ最後までご覧ください。
リン酸鉄リチウムイオン電池の劣化や安全性
ここからはリン酸鉄リチウムイオン電池の特徴について解説をしますが、一般的に言われる「サイクル・サイクル寿命」とは、ポータブル電源の寿命では無く、搭載されるバッテリーの「寿命=劣化の速度」と覚えておいてください。
長寿命
リン酸鉄リチウムイオン電池の最大の特徴は「長寿命」ですが、ポータブル電源の寿命には2つの考え方がありますが、多くのポータブル電源メーカーが公表しているのは「サイクル寿命(サイクル・サイクル回数とも言う)」です。
また、業務用のポータブル電源には「カレンダー寿命」も記載されている事もありますが、この場合は「期待寿命:10年」などと表記されています。
ここでのポイント
サイクル寿命:「放電 ⇨ 充電 ⇨ 放電」のサイクル
カレンダー寿命:経年を指します
最も多くのポータブル電源に使用されるリチウムイオン電池の場合「サイクル寿命は500回前後」ですが、リン酸鉄リチウムイオン電池の場合はそれを遥かに超える「数千回のサイクル寿命」が一般的です。
メーカー | Eco Flow | JVCケンウッド | Eco Flow |
型番 | EFDELTA (1260Wh) | BN-RB10-C | EcoFlow DELTA Pro |
ポータブル電源 本体 | |||
搭載バッテリー | 三元系リチウムイオン | リチウムイオン充電池 | リン酸鉄系リチウムイオン |
サイクル寿命 | 800回以上(80%) | 500回以上 | 3500回(80%) 6500回(50%) |
参考価格(税抜) | 126,818円 | 135,000円 | 363,000円 |
ここがポイント
サイクル寿命(回数)が多いほど「劣化のスピードが遅い」と判断できる
上表のような蓄電容量による「価格の違い」はありますが、リン酸鉄系リチウムイオンのサイクル寿命はこのように数千回を超えるものが一般的です。
注意が必要
サイクル寿命は「使用出来なくなる目安」ではありません
コストパフォーマンスが良い
リチウムイオンバッテリーに使用される原材料には「レアアース:コバルト」が使用されているため原価(販売価格)が高くなります。
一方、リン酸鉄系リチウムイオンの場合は「コバルト」を使用しないため、原価(販売価格)を安く抑える事が出来ます。
また、「リン」や「鉄」もコバルトよりも安価な材料なため、コストパフォーマンスが高いポータブル電源を作る事が出来るのです。
※リン酸鉄リチウムのポータブル電源を検討したい方はこちらから⇩⇩⇩
急速充電に対応できる
リチウムイオン系のポータブル電源の場合「0% ⇨ 100%までの充電に要する時間」は6時間~8時間程度になります。
しかし、リン酸鉄系リチウムイオン電池の場合は「高速充電に対応」していることもあり、大容量のポータブル電源(例えば:EcoFlow DELTA Pro)でさえ短時間でフル充電をする事が可能になります。
メーカー | Eco Flow | JVCケンウッド | Eco Flow |
型番 | EFDELTA (1260Wh) | BN-RB10-C | EcoFlow DELTA Pro |
ポータブル電源 本体 | |||
搭載バッテリー | 三元系リチウムイオン | リチウムイオン充電池 | リン酸鉄系リチウムイオン |
蓄電容量 | 1,260Wh | 1,002Wh | 3,600Wh |
充電時間 | 約1.6時間 | 約7.5時間 | 約3.1時間 |
しかし中には「例外」もあり、Eco Flowのポータブル電源については「特殊な技術:X-Streamテクノロジ」を使った充電方法が採用されているため、リチウムイオン系のポータブル電源でも急速充電に対応しています。
自己放電率
「自己放電率(じこほうでんりつ)」とは、ポータブル電源やスマートフォンなどに搭載されたバッテリーの電池残量が、放置された場合にどの程度減るのかを示すものです。
例えば、自動車などにも搭載される「鉛(なまり)のバッテリー」の場合、1カ月放置することで約20%の電力が減ります(自己放電)。
ところが、リン酸鉄系リチウムイオンの場合は「1カ月でたった1%しか自己放電」しないため、防災用(災害用)に長期保管する場合でも電池の残量を心配することがありません。
低温に強い
リン酸鉄系リチウムイオンはその特性から「低温に強い」と言われます。
ポータブル電源にはそれぞれ「推奨使用温度」がありますが、実際は-20℃の低温環境でも使用することが可能です。
ただし、「充電時」については0℃以上の温度が必要なため、氷点下の環境に於いて充電することは出来ません。
※ポータブル電源の温度に関する記事はこちら⇩⇩⇩
リン酸鉄リチウムイオンの安全性
ここからはリン酸鉄リチウムイオンの安全性について解説をします。
従来のリチウムイオン電池の場合は放電中(使用中)に発熱が起こるのですが、使用方法を誤ると発火や爆発する可能性があります。
また、鉛のバッテリーについては「過電流等で硫化水素が発生」するため、最悪の場合は身体に危険が及ぶこともあり過去には何件もの死亡事故が発生しています。
※発熱・発火に関する記事はこちら⇩⇩⇩
一方、リン酸鉄リチウムイオン電池は「熱分解温度が高い」「熱暴走をしない」などと言われますが、一般の方が聞いても「正直分かりにくい」ため、ここからはその理由を簡単に解説します。
リン酸鉄リチウムイオンが「発火」しない理由
小学生の「理科の授業」で習った記憶があると思いますが「物が燃える」場合はこの3つが必ず必要になります。
物が燃える際に必要な3つの要素
可燃物:ガソリン・ローソク・ガスなど
熱:ライターなどの火・熱源
酸素:空気の中に入っています
では、なぜ?リチウムイオン電池が「発火する理由」についてもここでは考えてみましょう。
発火に必要な要素が揃っている
可燃物:ポータブル電源やスマートフォン
熱:過電流などによる発熱
酸素:電池内部の酸素
リチウムイオン電池の場合は「可燃物・熱・酸素」の3つの要素が揃うため、発火や爆発が起こる可能性があるのです。
では、なぜ?リン酸鉄リチウムイオン電池が発火しない(発火し難い)のかについても簡単に解説をしておきます。
リン酸鉄リチウムイオン電池もリチウムイオン電池と同じように「発熱」は起こるのですが、燃える際に必要な「酸素」が発生しません。
専門的には「酸素の離脱がない」と言いますが、少し詳しく解説すると正極材結晶分子間の結合が強いので酸素の離脱が起こらないのです。
その他にも・・
ここでのポイント
内部短絡の発生ヵ所から燃焼しない
短絡部分が科学反応を起こし「絶縁体になる」ことで周囲への延焼を防ぐ
このようにリン酸鉄リチウムイオン電池が「発火」しない理由は幾つかあるのですが、ここでは「酸素が発生しないから燃えない(燃えにくい)」とだけ覚えておきましょう。
まとめ
この記事では【ポータブル電源】ポタ電を選ぶならリン酸鉄リチウム一択?|劣化や安全性は?について解説をしました。
リチウムイオン系のポータブル電源も「取扱い方法」を間違えなければ「安全に使用」することが出来るのですが、少しの不注意から「発火や爆発」が起こります。
しかし、リン酸鉄リチウムイオン電池に於いては「酸素が発生しない」事からも非常に安全性を高く評価され、ポータブル電源以外でも電気自動車や電動工具などにも幅広く使用されています。
記事のまとめ
サイクル・サイクル回数はバッテリーの劣化を判断する基準
ポータブル電源の主流はリン酸鉄リチウム
ポタ電を頻繁に使わない(防災用など)場合はリン酸鉄リチウムは管理しやすく、低温環境にも強い
発火によるリスクが極めて低い
最後に、キャンプやアウトドアでポータブル電源を使用する方も増えてきましたが、炎天下の車内にポータブル電源を放置するなどによる事故も増えています。
リン酸鉄リチウムイオン電池が搭載されたポータブル電源は「発火のリスクが低い」とは言え、取り扱い方法を間違えると思わぬ事故に遭う危険性もありますので、搭載されたバッテリーの種類を問わず「ポータブル電源の取扱い」には細心の注意を払うようにしてください。
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